⑱日本の公証役場での英文書類の宣誓認証
更新日:2020.6.24
香港のプロベート手続きは、『裁判所』への申立てですので、申立人が提出する書類にはいろいろと条件が求められます。
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目次
プロベート申立てにおいては英文書類の宣誓認証が必要
遺言がない場合、相続人が遺産管理人の候補者が申立人となります。
通常は相続人の中のいずれか一人が代表して申立人になります。
申立人は、故人(被相続人)にまつわる各事実を申立書に記載し、その内容が真実であることを宣誓しなければなりません。
このため、香港のプロベートでは『Affirmation』又は『Affidavit』という名の一種の宣誓供述書の形式で作成します。
英文文書の宣誓認証と私署(署名)認証は異なる
香港内でこの宣誓供述書を作成する場合、香港の弁護士(ソリシター)が署名に立ち会ってサインする必要があります。
しかし日本に住んでいる日本人が宣誓供述書を作成する場合、香港弁護士は日本国内におりませんので、公証役場で公証人に署名を『宣誓認証』をしてもらわなければなりません。
具体的には、英語で作られた供述書を公証役場に持ち込み、内容が真実であると『宣誓』したうえで公証人の面前で書類にサインしなければいけません。
『宣誓』といっても何か儀式をするわけではありません。ただ単に文書に『上記の通り宣誓した上で署名した』と書いてあるだけです。形式的な違いです。
この『宣誓』がなく、ただ単に公証人の面前で署名したものを『私署認証』とか『署名認証』といいます。
裁判所に提出する書類は基本的に『宣誓』が必要ですので『宣誓認証』で作成しなければなりません。
間違って『私署認証』としないように注意してください。
日本の公証人は日本語・日本法のエキスパートですが、英語・香港法のエキスパートではありません。したがって、英文で書かれた供述書の中身まで確認することはしません。
公証人は、『署名者が自分(公証人)の目の前で、内容が正しいことを宣誓して署名した』ということを認証してくれるだけで、中身については何らチェックしないのです。
もっとも、香港プロベートでの『Affirmation』又は『Affidavit』としては、この公証役場での宣誓認証で十分だとされております。
中には『宣誓認証』に慣れていない公証人もいる
公証役場は、日本国内各県ごとに複数ありますから、申立人は日本国内どこの公証役場で宣誓認証してもかまいません。しかし、公証人によっては外国語文書の宣誓認証に慣れていない人も中にはいます。
東京の丸の内や新橋近辺の公証人には、近くに(渉外)法律事務所が多いためか、日常的に外国文書の宣誓認証を扱っている人が多くおります。
最初からそのような公証人を選んで宣誓認証をお願いすると比較的スムーズに進みます。
注意点は、日本の公証役場で作る宣誓認証は1通17,000円と結構高額なことです。
署名する文書ごとに1通あたりの17,000円の費用がかかります。
香港で作成すれば知り合いの香港弁護士(ソリシター)にお願いするだけなのでほとんど無料で何通でも作成できます。
宣誓認証費用だけで10万円近くかかってしまうこともある
日本の公証役場で宣誓認証文書を作ると、上記のような金額がかかってしまうので費用が結構バカになりません。
できればなるべく宣誓認証文書を少なくしたいところですが、一般的なプロベート申し立てのケースだと、少なくとも4通、多ければ7-8通くらいの宣誓供述書を作らなければなりません。
従って、香港のプロベートをするときに日本に住んでいる方が申立人(遺産管理人候補者)となる場合、この宣誓認証費用だけで実費として10万円近く発生する場合もあることに注意が必要です。
また、宣誓供述書の内容に誤記や不足があった場合、申し立てた後に香港の裁判所から、宣誓供述書を補正するように求められる(Requisitionといいます。)ことがあります。
このような補正があるたびに、1通あたり17,000円の宣誓認証費用がかかってしまいます。
無駄な費用を極力抑えるため、申立段階で、誤記・書き漏らし・過不足など、のちのち裁判所からツッコまれないように、ミスのないしっかりした宣誓供述書を作成することが非常に重要です。
宣誓認証費用を無駄にしないため、翻訳をきちっと作る
このことは翻訳についても言えます。
中途半端な翻訳業者を使うと翻訳内容の間違いや、翻訳に訳出されていない欄外の記載が裁判所の登記官に見つけられて、補足の宣誓供述書を求められることもあります。
プロベートの裁判所は、形式部分にも非常に細かい点にまでこだわった書面の作成を求めてきますので、慣れていないと何度もやり直し、その度に時間と宣誓認証費用を浪費することになります。
私も重箱の隅をつつくような細かい補足のために宣誓認証を作り直さざるを得ないという苦々しい経験をしてきました。
このため、日本人の香港相続手続きでは、香港弁護士の中でも日本人の相続手続きを多数経験していて、裁判所がどのような点についてチェックするかをあらかじめわかっている人に依頼するのがいいでしょう。
以上のとおり、日本人の香港財産相続手続きでは、公証役場での宣誓認証が必須となる点をご説明しました。
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