㉟国際相続解決事例⑵:外国の遺言があるケース
更新日:2026.1.28
目次
はじめに
長年日本に居住していたオーストラリア人(故人)が遺言を残して亡くなりました。遺言があるのですが、日本の方式(自筆証書遺言・公正証書遺言)で作られたものではなく、どうやら外国の法律事務所で作られたもののようでした。遺言の内容は日本の財産を海外に住む親せきに残したいということでしたが、どういった手順で遺言に基づく相続手続を進めるべきでしょうか。
国際相続事案の概要
長年日本に居住していたオーストラリア人(故人)が遺言を残して日本で亡くなりました。
遺言は英語でオーストラリアの法律事務所でオーストラリアの方式で作られたものでした。
故人は日本にある銀行の預貯金にある程度の残高を持っていましたが、遺言では「日本の預貯金をオーストラリアに住む親族に遺贈すること」とされていました。遺言に従って、日本にある預貯金を解約して、適切にオーストラリアの親戚にに送金したいがどのように対応したらいいのでしょうか。
弊事務所では、亡くなったオーストラリア人(故人)と同居していたご友人から相談を受けた。遺言のコピーがあり、内容も把握することはできましたが、実際に日本の預貯金などの相続手続をするためには何をしたらいいのか分からないということで相談を受けました。
国際相続対応の内容
遺言には、遺言の作成を支援したオーストラリアの弁護士の氏名が書かれていました。弊事務所では、まずこのオーストラリアの弁護士に連絡を取ることから開始しました。
オーストラリアの弁護士に故人が亡くなったことを伝えたところ、オーストラリアの裁判所でプロベートという手続を開始して遺言書の原本をオーストラリアの裁判所に提出しなければならないということでした。
故人は日本の永住権を持っており、日本に住民票も持っていたため、死亡時に市町村役場には死亡届も提出されておりました。オーストラリアの裁判所で故人の死亡証明書が必要とのことだったため、日本の役所に提出された死亡届の証明書(死亡届記載事項証明書)を翻訳とともに送り、プロベート手続を進めてもらいました。
オーストラリアの裁判所でのプロベートが無事に終わり、オーストラリアの弁護士が当該遺言の遺言執行者に正式に就任することになりました。
上記の結果、法律的にはオーストラリアの弁護士が『遺言執行者』となることで適切な権限を取得したため、日本の金融機関から払戻手続を進められることとなりました。ただし、実際にはオーストラリアの弁護士は日本語も話せないし、わざわざ日本に来るほどの時間がないため、自ら日本の金融機関の窓口に行ったり、連絡して払戻手続をするのは難しい状況でした。
そこで、弊事務所が「遺言執行者(オーストラリア弁護士)の代理人」として、委任を受けて日本の金融機関とのやり取りを担当することにしました。
日本の金融機関に対して必要書類やその翻訳を提出し、無事に個人の口座残高の払戻を受けることができました。日本の金融機関にオーストラリアの法制度や遺言のプロベートの手続きなどについて説明することは少々手間がかかりましたが、国際私法上この遺言が有効であることなどを説明することで、理解を得ることができました。
必要経費を差し引いた後に、オーストラリア弁護士が指定する遺言執行者の口座に送金することで遺言通りの財産の遺贈を進めることができました。
本件事案の注意点
なお、日本からオーストラリアへの送金は「海外向け国際送金」となるため、送金時に銀行に対していくつかの書類を提出して説明しなければなりません。最近では国際送金(日本から海外への対外送金、海外から日本への対内送金)についての銀行の審査が厳しくなっております。
このような場合、送金の根拠や資料を提出する事で国際送金をスムーズに進めることができます。
遺言書の謄本やその翻訳、プロベート手続によりオーストラリア弁護士が遺言執行者となったことの説明書類を適切に提出する事が必須となります。
また、日本国内で故人が受け取っていた年金を停止し、死亡後に過払いとなっていた金額を返還するなど、日本国内の債権債務をオーストラリアに送金する前に処理しておく必要があります。一旦海外に送金してしまうと、再度不足分を日本に送金し直してしまうのに手間と費用が掛かってしまうからです。
銀行預金以外にも、日本に故人名義の自動車があったため、自動車の廃車手続や保険の解約等の手続きも弊事務所でまとめて代行しました。
また別の注意点としては、海外(今回はオーストラリア)の弁護士は日本の弁護士に比べて少し連絡が取りづらいことがあります。長期の休暇を取っていたためか、メールを送った後返信がかえってくるまでに2-3週間を要したり、郵便物のやり取りに時間(片道2週間程度)を要することがありました。
しかし、メールを使って英語で状況説明や要望事項を伝えるなどして適切にコミュニケーションをとることで、時間はかかりましたが特に問題なく処理することができました。
結果・解決までにかかった時間
結果として、日本国内の金融機関の残高をすべて払戻できました。また、故人名義の自動車の廃車や年金の受け取り停止など、故人の日本国内資産に関する対応は全て完了しました。
最初に相談を受けてから、完全に作業が終了するまで約1年半を要しました。
本件のまとめ
インバウンド需要の活性化などによって、日本に居住する外国人は年々増えてきています。
また、外国人が日本で生活を営む上で、日本の金融機関で銀行口座を持ったり不動産を所有するケースは増えています。
外国人は日本の相続制度をあまり理解していないため、遺言が母国語で作成されるケースや、(日本の方式ではなく)母国の法律に基づいて作成されるケースも多くあります。日本語が話せない外国人の場合は特にその傾向が強いです。
外国人が亡くなった後、外国方式の遺言が有ることが判明すると、遺族や親戚はどのように対応したらいいか困ることになります。必要に応じて外国の弁護士と協力することで、本件のような特殊な国際相続の事例も最終的に解決することができるのです。
弊事務所では、特に英語圏の外国に関する相続問題(国際相続)に豊富な経験を有しております。
香港法、国際相続がらみのご相談はこちら
弁護士法人琉球スフィア(日本)
+81-98-862-8619
ホームページはこちら
Fred Kan & Co.法律事務所(香港)
+852-2598-1318
ホームページはこちら
メールでのお問合せ
info@silk-stream.com








