⑥故人の海外相続財産の把握(調査)方法
更新日:2020.6.24
海外の相続手続きの手始めとして、ここでは故人の海外財産状況の把握の方法を説明します。財産がどこに、どのようなものがあるか、を調べて把握するのが相続手続きの最初のステップです。
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目次
相続財産調査の方法は『とっかかり』となる資料を探すことから
そもそも故人が日本国内・海外にどのような財産を持っていたか、ご本人が『遺言』とか『エンディングノート』など、自分の財産を列挙して紙に残してくれていた場合は、相続人にとっても分かりやすいです。
しかし、実際には遺言などを作らないで突然亡くなられるケースが結構多いものです。
そのような場合、残されたご遺族はどうやって相続財産を把握していくのでしょうか?
結論から申し上げますと、非常に原始的な方法に頼ることになります。
故人の海外の財産状況を把握するには、下記のような探し方で『とっかかり』となる資料や情報を探します。
相続財産資料・情報の探し方・探し場所 |
・故人の遺品の整理(日本又は海外の故人の自宅、職場又は滞在場所、手帳など) ・故人宛に届く郵便物の開封・確認(日本又は海外の自宅、職場又は滞在場所宛) ・金庫(自宅又は職場)或いは銀行の貸金庫の開扉[1] ・故人のPC、携帯・スマホのブラウザに保存されたオンライン銀行口座・オンライン証券口座のブックマーク ・故人のメールアドレス宛に届く金融機関からのEメール通知 ・故人の友人・職場の同僚からの聞き取り情報(家族に伝えていない事情があるかもしれません) |
郵便物や金庫、携帯・スマホやメールを勝手に開いてしまうのは故人のプライバシーにかかわりますし、信書開封罪のような犯罪の可能性があるので躊躇があるかと思います。
しかし、相続手続きのために相続人全員の総意で開くのであれば基本的には問題ないと思われます。
遺族が探すべき「とっかかりとなる財産資料」一覧
次のような情報や資料があると相続手続きを進めるのに役立ちます。
探したいもの | とっかかりとなる資料・情報 |
遺言 | 遺言書、弁護士事務所の名刺、封筒又は手紙 |
資産(プラスの財産) | |
銀行口座・証券口座 (上場株式・ ファンド・債券 など金融商品) | 金融機関からの手紙、口座明細(Statement)、 オンラインバンキング(オンライン証券)等のID及びパスワード、 金融機関の連絡担当者(Relationship Manager)等の名刺、 金融商品等購入の際にサインした契約書類等 |
生命保険、その他保険 | 保険会社からの手紙、保険契約書(Insurance Policy)、 残高(残存価値)明細(Statement)、 保険契約者のオンラインアカウントのID及びパスワード、 保険エージェントの名刺、保険購入の際にサインした書類等 |
不動産 | 不動産登記関係書類、弁護士事務所からの手紙等、 政府からの固定資産税(Property Tax, Government Rent)等の通知書、賃貸借契約書 |
非上場株式 | 株式証明書、税務申告書等 会社秘書(Company Secretary)又は法律事務所等からの連絡 |
税還付金 その他債権 | 直近年度の税務申告書等、借用証書又はそれに類する書類、 法律事務所からの手紙等 |
負債(マイナスの財産) | |
クレジットカード | クレジットカード明細、銀行の口座明細 |
借入 | 借用証書又はそれに類する書類、 法律事務所からの手紙、判決書等 |
賃料・光熱費等 | 賃貸借契約書、光熱費請求書等 |
上に記載した相続財産把握の「とっかかりとなる資料・情報」から、相続財産を探します。
何か『とっかかり』になる資料があれば、それが不完全なものであってもそれを頼りに相続財産があったかなかったかなどの調査の見当(めど)がつきます。
銀行の名刺や手紙などから相続財産が『発掘』されることもある
例えば海外の銀行口座については、手紙や名刺などから銀行名さえわかれば、その銀行の連絡窓口にメールや手紙等で被相続人名義の口座の有無を問合せすることができます。
問い合わせたら相当残高があることも判明するので、バカにできません。
もっとも、海外の金融機関などとの連絡は外国語で行わねばなりません。
必要書類を集めて一つ一つの金融機関とやりとりしなければなりませんので、かなり根気のいる作業になります。
場合によってはメールや電話で担当者と外国語で連絡しなければなりません。
現地の弁護士等の専門家に依頼すれば金融機関等との連絡がわりとスムーズになります。
例えば私の所属する香港の法律事務所であれば、香港の財産について相続財産の調査や銀行との連絡の代理ができます。
香港外の財産調査について調査が可能な場合もあるし、たとえ不可能であったとしても適切な現地の弁護士を紹介できます。
自分では難しいなと思ったら、多少費用は掛かりますが、時間節約のため財産がある国の法律事務所(できれば日本語が使えるところ)などに依頼することをお勧めします。
私の方でも随時調査を行っておりますので、お気軽にお声がけください。
以上、海外の財産状況の把握の仕方について説明しました。
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