日本人弁護士(日本・香港・NY州)による国際相続・海外企業法務

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日本人弁護士(日本・香港・NY州)による
香港財産相続・海外企業法務
香港(永住権保有)在住・日本人弁護士による国際企業法務・相続・資産管理

香港で、日本人・日本企業が関係する国際企業法務・国際取引契約・国際相続・海外資産管理の実績(全国対応)を多数有する弁護士の絹川恭久です。

日本、NY州及び香港3つの法曹資格を持ち、日本(15年以上)と香港(5年以上)でそれぞれ実務経験を持っております。
国際相続の極意 Inheritance Laws in Japan

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㉑海外財産がある場合の遺言の作り方

更新日:2020.6.24

テーマ⑥テーマ⑯では、亡くなった後に、相続人が銀行口座や証券口座などを調査するのは、原始的な作業で結構大変だ、という話をしました。

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遺言やエンディングノートは遺族が相続財産を把握するためにも重要

そのため、被相続人が生前、遺言とかエンディングノートの形でどこにどんな財産があるかを書き残しておくことはとても重要です。
財産の把握や調査が困難な国際相続であれば、なおさらそのように財産一覧を残しておくことは重要です。

この文章を書いている時点(2020年5月)では、世界中でコロナウィルス感染が拡大・蔓延しており、日本でもまだまだ収束が見通せません。

そういう状況もあるためか、現在日本の公証役場が大盛況だそうです。
なぜかというと、皆さんがコロナで自分の突然死を連想して公正証書遺言を作るようになったからだと言われています。

普段は自分の死を意識しない人も、こういう状況では生前の相続対策として遺言を作っておかねばならない、という心理になるようです。

遺言を作るのはまだまだ一般的ではないが…

コロナ拡大以前から日本で遺言が作成されるのはそこまで一般的ではありませんでした。

相当資産がある方が、がんで余命宣告されたとか、かなり高齢になってから病気で入院した、などと身近に死を意識して初めて遺言を作ることが多いようです。
大部分の健康な方や「自分はあまり資産を持っていない」と考える方にとっては、遺言は他人事だったのかもしれません。
しかし、昨今は身近に死を意識しようとしまいと遺言を作っておくことは、死後に相続財産の把握が難しくなったり相続人間での無用な争いが起こることを避けるために必要性が認識されるようになっています。

日本と相続制度が違い、財産の把握が困難な海外に財産がある方はなおさらです。
確かに遺言ではプロベートを回避することはできません
しかし、それでも海外の相続財産の所在を明確にしたり、相続人の間で揉めないように財産の分配方法をあらかじめ決められるので、海外財産についても遺言を作っておくことはそれなりに意味があります

マニラ、フィリピン
マニラ、フィリピン

海外財産の遺言は余裕をもって元気なうちに作るべき

ここで注意すべきは、海外にも財産がある方は焦って遺言を作らない方がいいということです。
できれば高齢になって死を身近に意識する状況になる前に、余裕をもって作ることをお勧めします
それはどうしてでしょうか?

実は、例えば海外の財産を含めた日本の公正証書遺言を作ってしまうと、海外での相続手続きにかえって手間がかかってしまうような場合があるからです。

海外に財産がある場合の正しい遺言作成実務は、「財産がある国ごとにその国の財産に限定した遺言をつくること」です。
すなわち、日本と香港に財産を持っている方は、日本の財産については日本方式の遺言(公正証書遺言)、香港の財産については香港方式の遺言を別々に作ることが安全です。
日本の公正証書遺言で香港の財産の分配方法を決めてしまうことはあまりお勧めしません。

海外の財産については、日本の公正証書ではなく、海外の方法で遺言を作るべき

なぜかというと、日本の公正証書遺言があると香港のプロベート手続きで無駄な手間が増えるからです。

テーマ⑦で説明した通り、香港の財産はたとえ遺言があってもプロベート手続きが必要です。
遺言執行者が香港の裁判所にプロベートの申立てをしなければなりません。

仮に香港財産に関する遺言が日本の公正証書で作られていると、日本の公正証書遺言を香港の裁判所に提出しなければなりません
当然英語の翻訳が必要になりますし、原本の提出が求められます。

日本の公正証書遺言の原本は公証役場に保管されていて持ち出し禁止です。
相続人には公正証書遺言の『正本』か『謄本』しか発行されません。
このため、香港の裁判所にはなぜ日本の公正証書遺言の原本を提出できないかを英語で説明しなければならなくなります。
このように日本の公正証書遺言を香港(又は英語圏)でプロベートするには相当な面倒があります

マニラ、フィリピン
マニラ、フィリピン

遺言の作成方式は国ごとで異なることに注意

そもそも、遺言の方式というものは、相続手続きと同様、国ごとで異なっております
日本の公正証書遺言や自筆証書遺言にあたる制度は、香港や他の英語圏(英米法)の国にはありません。

一般的に英米法の国では、
 ・遺言はワープロ打ちして
 ・①末尾に作成者本人が署名し、
 ・②その署名を2名以上の立会人が現認すること、
という方式で作成できます。
英米法ではそういった遺言を前提にしているので、香港の裁判所にとって日本の『公正証書遺言』とか『自筆証書遺言』は見慣れない方式なので戸惑ってしまいます。
前提が違うことについて、いちいち日本の弁護士が意見書(宣誓供述書)で説明しなければならないのです。

そういった事情があるため、私が日本人で海外財産を持つ方にお勧めするのは、
「財産が所在する国ごとでその国の方式に従った遺言を別々に作る」
ことです。

上記に説明した理由により、ある一つの国の方式の遺言に他の国の財産についての規定を含めるのはリスクがあります。『遺言は(各国の財産を)混ぜるな!危険』ということで、よく覚えておいてください。

以上のとおり、海外財産を持つ方が遺言を作成する場合、財産が所在する国ごと、それぞれの国の方式に従った遺言を作ることを強くお勧めします。実際の遺言作成にあたっては、国際相続や海外財産の生前相続対策に通じた弁護士に依頼するのがいいでしょう。

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