⑤日本人の相続手続にあたって最初に知っておくこと(相続税の納期限)
更新日:2020.6.24
テーマ③で説明したとおり、日本で死亡届を提出してはじめて相続手続きが本格的に開始します。
ここでは、亡くなった日本人が海外に財産を持っていた場合にご遺族が相続手続きを進める際にまず考えるべきこと(期限と順序)について説明します。
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目次
日本人は基本、海外財産についても日本の相続税がかかる
日本人が相続手続きを始める際、必ず頭に入れておかねばならないのは日本の相続税のことです。
日本人(ここでは日本国籍を持っている人という意味です)が亡くなった場合、亡くなる相当前に家族全員が海外に長期間(10年以上継続して)移住しているような特殊な状況でない限り、日本国内の財産だけではなく海外の相続財産についても日本の相続税がかかります(全世界財産が課税対象⇒非常にわかりにくいですが国税庁HP参照)。
相続人は10か月以内に相続税申告・「納税」する必要
また、日本の相続税は「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」に(1)申告し、かつ(2)納税もしなければなりません(国税庁HP参照)。通常は死亡の翌日から10か月と考えて差し支えないでしょう。
納税者は相続人、すなわち『ご遺族』です。
相続税の「申告」だけではなく「納税」も10か月以内です。
相続財産が多額になる場合相続税も多額になりますが、10か月以内に多額の納税資金の工面をし、かつ、全額支払しなくてはならないのです。
テーマ①から③で説明した通り、海外で日本人が死亡すると死亡届で戸籍に「死亡」を反映させるだけでも簡単に1~2か月は過ぎてしまいます。
また、故人の死後、葬儀・墓地の手配、遺品の整理や近親者・知人への返礼など遺族がやるべきことは山ほどあります。
これを考えると「申告・納税を死亡後10か月以内」というのは非常に短い時間です。
この期限を過ぎると相続人(ご遺族)は本来払うべき(ただでさえ多額の)相続税にプラスして、延滞税や加算税までも上乗せして支払わなければなりません。

「海外に財産がある」ことは納期限延長の理由とならない
相続税の申告・納期限は特別な事情がある場合だけ2か月まで延長してもらえます。
しかし、故人が海外で亡くなったことや海外に相続財産があることはこのような『特別な事情』とは認められません。
したがって、海外に相続財産があろうと、何が何でも10か月以内に申告・納税しなければならないことを肝に銘じてください。
ところで、テーマ⑧でも説明しますが、海外に日本人の相続財産がある場合、海外財産を相続人の手元に移すためには、財産がある各国ごとで相続手続きをしなければなりません。
さらに英米法の国ではプロベートという手続きに1年以上の時間がかかります。
日本人の場合、プロベート裁判所に提出する書類を取得して翻訳するのに作業時間がかかってしまうので、手続きの長期化は避けられません。
海外財産は把握するのが大変
相続税納税のために海外の相続財産調査も各国で行わなければなりませんが、日本にいるご遺族にとっては海外財産の内容を把握するだけでも相当大変です。
ご遺族が自力で探すのが困難でしたら、できるだけ早めに海外財産の相続手続きができる弁護士や海外財産の相続税申告ができる税理士を見つけることをお勧めします。
なお、私の所属する香港の法律事務所でも、香港や一部の英米法の国に資産を保有する方の財産調査(金融機関への残高照会)の代行をしております。財産調査(金融機関への残高照会)には代替2-3か月程度の時間がかかりますので、余裕をもってご依頼されることをお勧めします。

納期限より十分前に余裕を持って専門家を見つけること
余談になりますが、先に述べたとおり延滞税・加算税はタイミングさえ遅れなければ払わなくてよいものです。
これら延滞税・加算税はもともとの相続税額に対して一定の率をかけて計算されますので、納税する相続税額が大きくなればなるほど延滞税・加算税も大きくなってしまいます。
元となる相続税額が多額だと、相続税申告や相続手続きにかかる弁護士・税理士費用よりも延滞税・加算税の方が大きくなってしまうこともあります。
期限が過ぎてしまうと延滞税・加算税のペナルティは逃れようがありません。無駄なペナルティを払わないですむように絶対に相続税の申告・納期限に遅れないようにしましょう。
適切な弁護士や税理士など専門家を雇う費用は、『無駄なペナルティを回避するための必要経費』とお考え下さい。
(我田引水に聞こえるかもしれませんが)払わなくてもいい延滞税・加算税を避けるために、適切な専門家に払う必要経費を渋ってはいけません。
海外の相続手続きを10か月以内に終えることはほぼ不可能
なお私の経験上、海外に相続財産がある場合、死亡後10か月以内に『海外の相続手続き』を全て終えて財産を相続人の手元に取り戻す(不動産の名義移転や銀行口座の払戻を終える)ことは、ほぼ不可能です。
したがって、実際には海外の相続手続きが終わる前に日本の相続税納期限(死亡後10か月)がほぼ確実に来てしまいます。
ですから間違っても「相続手続きが済むまで相続税を申告・納税しなくてもいい」とか「まだ相続財産を受け取っていないので相続税を申告・納税しなくてもいい」などと間違った思い込みをしないでください。
ご遺族がまだ実際に海外の財産を受け取っていなくても日本の相続税は払わなければならないのです。
海外に多くの財産がありそうだとわかったら、とにかく早め海外財産の対応ができる税理士か弁護士を見つけるべきなのです。
なお、相続税申告の税理士に依頼する場合、納期限の10か月ギリギリではなく、余裕をもって納期限の半年前くらいには依頼する税理士にコンタクトを取っておくのがいいでしょう。税理士に提出する書類を集めるのに時間がかかる可能性があるからです。
以上のとおり、相続税の納期限が、被相続人の死後10か月以内であることは海外財産の相続手続きを始める前に遺族が必ず知っておくべき最も重要な問題です。
これを必ず念頭に置いて、必要な専門家を早めに見つけて相続手続きを進めることをお勧めします。

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