日本人弁護士(日本・香港・NY州)による国際相続・海外企業法務

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日本人弁護士(日本・香港・NY州)による
香港財産相続・海外企業法務
香港(永住権保有)在住・日本人弁護士による国際企業法務・相続・資産管理

香港で、日本人・日本企業が関係する国際企業法務・国際取引契約・国際相続・海外資産管理の実績(全国対応)を多数有する弁護士の絹川恭久です。

日本、NY州及び香港3つの法曹資格を持ち、日本(15年以上)と香港(5年以上)でそれぞれ実務経験を持っております。
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⑫(銀行・証券会社)ジョイントアカウントにはプロベートは不要

更新日:2020.6.24

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香港法、国際相続がらみのご相談はこちら

英米法(香港)では日本にないジョイントアカウントがある

香港の銀行口座や証券口座で、日本の銀行口座や証券口座と異なるひとつの特徴は、

『ジョイントアカウント』というものがあることです。

『ジョイントアカウント』とは、二人以上の人が共同で名義人となる共同名義口座のことです。
普通は夫婦とか、親子など、近い関係の家族同士がジョイントアカウントを作ります。

どういうメリットがあるかというと、たとえば共同名義人が二人のジョイントアカウントの場合、
名義人のうちの一人が先に死んだ場合、相続手続きなどをしなくても残った一人の名義人の単独口座になる
ということです。

ジョイントアカウントのメリットはプロベート不要なこと

ジョイントアカウントの共同名義人のうち生き残った名義人には、『生存者権(Right of Survivership)』という権利があるため、
亡くなった名義人のプロベート手続き(相続手続き)をすることなしに自動的に単独口座となって、以後は自分の口座として単独で使い続けられるのです。

この『プロベートを回避できる』という点がジョイントアカウントの最大の魅力です。

カルカッソンヌ(南仏)
カルカッソンヌ(南仏)

ジョイントアカウントは英米法由来の制度ですので、香港以外もアメリカはイギリスなど、英語圏(英米法)の国で存在します。また銀行口座に限らず、証券口座でもジョイントアカウントを利用できる場合があります。

ジョイントテナンシーという制度も同様

さらに、『ジョイントテナンシー』という、ジョイントアカウントと同様の制度があります。
株式や不動産を『ジョイントテナンシー』として夫婦や親子の共同名義にしてしまうと、どちらかが死んでしまっても『プロベート』をしなくても単独名義の株式や不動産として使い続けることができます

もしも亡くなった方の香港の銀行口座が『ジョイントアカウント』なら、口座残高を払い戻すためのプロベートをやる必要がありません。口座が故人の『シングルアカウント(単独名義口座)』なら口座残高を払い戻す前に裁判所でのプロベートが必要なため、手間・費用・時間が余計にかかってしまいます。

ジョイントアカウントかどうかを確認する方法

故人の銀行口座や証券口座が『ジョイントアカウント』か『シングルアカウント』かを確認する方法は、
金融機関から送られてくる明細書(Bank Statement)や連絡の郵便宛名に、二人の名前が記載されているかどうか
でわかります。
なお、これらを故人の遺物から探し出す方法についてはテーマ⑥にまとめています。

例えば宛名に『Mr. Yamada Taro and Mrs. Yamada Hanako』とか『Mr. Yamada Taro / Mrs. Yamada Hanako』などと書かれていたらおそらくジョイントアカウントです。
Mr. Yamada Taro』だけとか『Mrs. Yamada Hanako』だけであればシングルアカウントです。

カルカッソンヌ(南仏)
カルカッソンヌ(南仏)

もっとも、ジョイントアカウントを作るためには、口座開設の時に共同名義人が銀行に行って書類にサインしなければなりません。
シングルアカウント(単独名義口座)として作った口座を途中からジョイントアカウント(共同名義口座)に切り替えることはできません。
新たにジョイントアカウントとして作り直す必要があります。

もしも、「相続人の方が個人と一緒に香港の銀行に行って一緒に口座開設書類にサインした」という記憶があるのであれば、それは故人とのジョイントアカウントである可能性があります。

銀行は相続人の問合せに簡単に答えてくれない(ことが多い)

万一、明細書も記憶も何もなく、ジョイントアカウントかどうかわからない場合、金融機関に問い合わせて確認する必要があります。

テーマ⑯でも説明しますが、銀行や証券会社は顧客情報について厳格な守秘義務があるので、口座名義人以外からの問合せに簡単には答えてくれません
ジョイントアカウントなら、生き残った共同名義人の問合せには答えてくれるはずですが、口座名義人でない人の問合せには、何も回答してくれません。
もしも口座が故人の単独口座なのであれば、死亡証明書などを出して相続人であることを証明しなければ問合せには回答しません

昨今は、顧客情報管理守秘義務マネロン対策についての法令順守が厳しく監督されるようになりました。
このため、相続人の申請であっても金融機関はなかなかフレキシブルには対応してくれないのが実情です。

金融機関によってはメールや電話の問合せに対しては何一つ答えてくれない可能性があります。
その場合は、香港の弁護士を代理人として、正式な書面(手紙)を銀行に送って問い合わせるしかありません。

以上のとおり、相続財産に香港に銀行口座や証券口座があることがわかった場合、まずは、
 その口座がジョイントアカウントであるかどうかを確かめること
をお勧めします。
ジョイントアカウントであれば、香港のプロベート手続が必要ないため、払戻しのための費用や手間が格段に安く済みます。

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カルカッソンヌ(南仏)
カルカッソンヌ(南仏)

プロベート全般に関するその他の記事はこちら↓
 ⑦相続手続に関する日本法と英米法の根本的な違い(1)(プロベートが必須)
 ⑧相続手続きに関する日本法と英米法の根本的な違い(2)(国ごとのプロベート)
 ⑨相続手続きに関する日本法と英米法の根本的な違い(3)(プロベートの順序)

香港特有のプロベートに関する記事はこちら↓
 ⑩香港では遺産分割協議書だけでは相続できない(プロベートが必要)
 ⑮香港のプロベートにかかるおおよその時間
 ⑯香港の銀行・証券会社への口座残高の照会は結構難しい
 ㉗事例紹介:公正証書遺言のプロベート(香港の場合)

プロベートの回避方法・生前対策に関する記事はこちら↓
 ⑪香港の生命保険契約がある場合、プロベートは全く必要ない?
 ⑲海外財産の生前相続対策(1)(極力プロベートを回避すること)
 ⑳海外財産の生前相続対策(2)(資産管理会社について)

海外の信託(Trust)に関する記事はこちら↓
 ㉒海外の信託(Trust)について①~信託の歴史~
 ㉓海外の信託(Trust)について②~海外信託の利用~
 ㉔海外の信託(Trust)について③~信託の種類~
 ㉘裁量信託(Discretionary Trust)と意向書(Letter of Wishes)
 ㉙裁量信託の意向書(Letter of Wishes) に書き込む内容について

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