日本人弁護士(日本・香港・NY州)による国際相続・海外企業法務

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日本人弁護士(日本・香港・NY州)による
香港財産相続・海外企業法務
香港(永住権保有)在住・日本人弁護士による国際企業法務・相続・資産管理

香港で、日本人・日本企業が関係する国際企業法務・国際取引契約・国際相続・海外資産管理の実績(全国対応)を多数有する弁護士の絹川恭久です。

日本、NY州及び香港3つの法曹資格を持ち、日本(15年以上)と香港(5年以上)でそれぞれ実務経験を持っております。
国際相続の極意 Inheritance Laws in Japan

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㉓海外の信託(Trust)について②~海外信託の利用~

更新日:2021.1.23

テーマ㉒では、イギリスで発祥した信託(Trust)が時代を経て米国・日本に波及し、各地で独自性をもって発展した歴史を紹介しました。
今回は信託の中でも日本人になじみの薄い、海外信託(特に英語圏のTrust)制度が資産承継や相続対策の文脈で利用される状況について説明します。

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日本国内でも『信託』が資産管理・承継の手法として使われるようになった

日本では、2007年の信託法改正以降『家族信託』という名称で資産承継のために信託が利用されるようになりました。
現在では、弁護士・司法書士・税理士等の専門家や信託銀行等の業者が家族信託による資産承継について積極的に情報発信しています。

近年日本でこのように家族信託が活用されるようになった経緯には、英米法圏(英米法(コモンロー)という法制度が採用されている地域)で日本よりも以前から『信託(Trust)』制度が資産管理・承継の手法として利用されてきており、日本もそれに倣ったという背景があります。

サン・シル・ラポピー(南仏)

20世紀後半、先進各国で大戦後の経済成長や資本集積により富裕層や財閥といわれる資産家が形成され、資産管理・承継に対する設計のカスタマイズや税負担の低減・効率化というニーズが生まれました。
そのような中、1980年代頃から国際間の法律・税制度の違いを利用した資産管理の法技術が主に米国を中心とした金融業界で編み出され、その手法の一つとして信託(Trust)制度が利用されるようになったのです。

英語圏で『信託(Trust)』が富裕層向けの資産管理・承継手法として発展

アジア圏でも、香港シンガポールこれらも英米法圏に含まれます)などで財を成した資産家(いわゆる財閥)が、
 ① 資産承継(相続)に対する税負担回避、
 ② 資産内容が相続(プロベート)手続で公開されないためのプライバシー保護、
 ③ 築いた財産が世代間承継で分散しないための予防策、

を主な目的として信託(Trust)制度を利用するようになります。

資産承継において信託(Trust)制度を利用すると、なぜ上記のようないくつかのメリットを受けられるのでしょうか?
長くなりますが、以下に順を追って説明したいと思います。

一口に信託(Trust)といっても、使う文脈や利用する人の立場によってとらえ方が異なります。
なるべく簡単にいうと、信託(Trust)とは委託者(財産保有者)の保有する財産を、受益者(財産保有者自身やその家族など)のために管理するなど一定の目的のために、受託者に託して保有させる」テーマ㉒参照)という財産の保有形態のことをいいます。

財産の名義が委託者(元の保有者)から受託者に移すことからのメリット

  1. 財産を信託(Trust)して、資産家の個人所有財産から切り離して『受託者(Trustee)』(個人や信託会社などの第三者)の名義に移してしまうことで、形式的に『相続(プロベート)』を不要としてしまいます。
    信託(Trust)された財産は、万一資産家個人が亡くなっても通常の『相続制度(プロベート)』を経ずに次の世代によって利用し続けられます。
    以前別のコラムでプロベートの負担が大変であると書きましたが(テーマ⑦からテーマ⑮など)、信託(Trust)のプロベート回避機能は捨てがたいものがあります。
  2. また外部から見ると、あくまで財産の名義人は『受託者』ですから、本来の所有者(資産家)は表に出ません。
    資産家個人の所有物だと分からなければ、財産の中身が他人に覗かれる心配がありません。
  3. 更に、資産家個人の所有物だと本人が亡くなった後、遺族が財産をめぐって骨肉の争いが生じることがあります。信託(Trust)することで財産は第三者に管理されるので、たとえ遺族(配偶者や息子・娘)であろうと、故人の財産を勝手に独占することはできません。
    あくまで信託契約に従って受託者(受託者には遺族ではない第三者がなれる)によって適切に管理されます。
シャトー・デ・ミランボー(ボルドー近郊)

信託には遺言ではできない「多世代の承継方法の指定」が可能

もっと便利なことに、信託(Trust)は(一定の制限がありますが)自分の次の承継者だけではなく、次の次、さらにその次、と数次にわたって承継人を予め指定できます。遺言ではこれはできません。
これは信託と遺言の最も大きな違いです。

このため、遺言で家族の誰かに財産を残すと、財産を受け取った人(受贈者)が以後は所有者として勝手に使ったり次の承継人を決められます。

しかし信託(Trust)では、資産家自身の次の受益者を指定しながら、その受益者が亡くなった後の次の受益者、更にその後次々の受益者をあらかじめ指定しておけます。

これによって、例えば資産家が後妻に財産を残しつつ、後妻が死んだ後は、正妻の子に財産が戻るように設計したりできます。
また、万一息子の出来が悪かったり財産管理能力が無かったら、出来の悪い息子には一定の金額を月々受け取れる権利だけを与え、株式や家屋などの重要な財産の所有権を与えない方が良い場合があります。
あるいは出来の悪い息子を飛ばして次の(まともな)後継者に引き継がせることも考えられます。
信託(Trust)を使うことでこういったニーズに柔軟に対応することができますが、遺言ではこういった取り扱いは難しいです。信託はこのように『放蕩息子(娘)の散財』を防ぐといったニーズにも利用できます

信託(Trust)を資産承継の文脈で活用し、財産の分散を防ぐ

これらの信託(Trust)の特徴・性質を熟知したうえで、資産管理・資産承継の設計に生かすことで、自ら築いた財産を確実に次世代以降に受け継ぎ、資産が分散することを防げるのです。
場合によっては税負担も効率化できます。

日本では資産家も三代経ると平民に戻ると言われたりしますが、これは相続税が重すぎること、戦後新民法で兄弟間平等の相続制度が導入されたことと強く関係しています。
長くなってしまうので、これらの説明や日本の法制津・税制度と信託(Trust)の利用可能性については、別に稿を譲ることにします。

なお、これらの点は私も共著で参加している著作『アナリスト・弁護士・税理士が伝授する財産を減らさない分散管理のポイント100』もぜひご参照ください。 この著作では、相続、税務、資産の保有方法から税務当局による個人の資産情報管理まで広く取り扱っています。

今回は、資産家・富裕層の関係で信託(Trust)制度が利用されている現状及びその背景を説明しました。次回以降も何回かに分けて信託(Trust)をさらに細かく説明していきます。

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サン・シル・ラポピー(南仏)

プロベート全般に関するその他の記事はこちら↓
 ⑦相続手続に関する日本法と英米法の根本的な違い(1)(プロベートが必須)
 ⑧相続手続きに関する日本法と英米法の根本的な違い(2)(国ごとのプロベート)
 ⑨相続手続きに関する日本法と英米法の根本的な違い(3)(プロベートの順序)

香港特有のプロベートに関する記事はこちら↓
 ⑩香港では遺産分割協議書だけでは相続できない(プロベートが必要)
 ⑮香港のプロベートにかかるおおよその時間
 ⑯香港の銀行・証券会社への口座残高の照会は結構難しい
 ㉗事例紹介:公正証書遺言のプロベート(香港の場合)

プロベートの回避方法・生前対策に関する記事はこちら↓
 ⑪香港の生命保険契約がある場合、プロベートは全く必要ない?
 ⑫(銀行・証券会社)ジョイントアカウントにはプロベートは不要
 ⑲海外財産の生前相続対策(1)(極力プロベートを回避すること)
 ⑳海外財産の生前相続対策(2)(資産管理会社について)

海外の信託(Trust)に関する記事はこちら↓
 ㉒海外の信託(Trust)について①~信託の歴史~
 ㉔海外の信託(Trust)について③~信託の種類~
 ㉘裁量信託(Discretionary Trust)と意向書(Letter of Wishes)
 ㉙裁量信託の意向書(Letter of Wishes) に書き込む内容について
 ㉚裁量信託(Discretionary Trust)と意向書(Letter of Wishes)の活用法

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