⑯香港の銀行・証券会社への口座残高の照会は結構難しい
更新日:2020.6.24
ここでは海外の銀行や証券会社に対する亡くなった方の口座残高照会について説明します。香港での口座残高照会の手続きを例にとって説明していきます。
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目次
いずれにしても銀行や証券会社への口座残高照会は必要
香港のプロベートを進める場合、相続財産となる香港の銀行や証券会社(以下「銀行等」といいます。)の口座残高の照会請求を必ずしなければなりません。
テーマ⑫では、ジョイントアカウントであれば相続手続きが不要だと説明しましたが、
亡くなった方の口座が共同口座(ジョイントアカウント)なのか単独口座(シングルアカウント)なのか不明であれば、まず銀行等に問合せなければなりません。
また、口座があっても残高が非常に少なければ相続手続きをする弁護士費用の方が高くなってしまいます。
残高がどれくらいあるか分かってからでないと、弁護士費用をかけてまで香港の相続手続きをすべきかどうかを決められません。
そこで、たいていの場合まずは銀行等への口座残高照会をするのですが、日本に住んでいるご遺族(相続人)からすると、香港の銀行等の残高照会手続は結構難しいものがあります。
ホットライン電話では基本的に口座残高を教えてくれない
電話で問い合わせる場合、英語でホットライン番号にかける必要があります。
しかし、たいていの場合電話口で自動音声が流されて、生身の担当者までたどり着くのにいくつもボタンを押さなければなりません。
ここで大体心が折れます。運よく担当者にたどり着いても、適切に本人確認ができなければ、口座について何も回答してくれません。
個人情報保護や守秘義務の観点から、最近の銀行等は口座名義人本人以外には電話口では何も答えてくれません。
当然残高も教えてくれません。
運が良ければオンラインバンキングにログインできて、故人名義の口座残高や月々の明細書を見られるかもしれません。
しかし最近ではオンラインバンキングのセキュリティレベルが上がっています。
ユーザーIDとパスワード以外にも、ワンタイムパス発行機器や、パスワード以外の別の暗号が必要だったりします。
故人がそれらをしっかりとメモに残してくれていればいいのですが、そうでないとオンラインバンキングも行き詰ってしまいます。
オンラインバンキングは遺族には難しい
実際、ご遺族が一度も実際に使ったことがないオンラインバンキングにログインするのは非常に難しいです。
何度も入力失敗するとアカウントがロックされてパスワードが二度と使えなくなってしまう危険もあります。
故人の側での生前対策としては、ご遺族のために
① オンラインバンキングのログイン方法を必ずメモに残しておくこと、
② 可能であれば、ご家族に一度試しにオンラインバンキングにログインする体験をさせておくこと、
などがおススメなのですが、なかなか実際には難しいかもしれません。
結局のところ、ご遺族が頑張って電話での問合せやオンラインバンキングログインしてみても、口座残高や口座の種類(ジョイントアカウントかどうか)がはっきりしない場合があります。
手を尽くしてダメならばレターを発送する
そのような場合、やはり文書(レター)の形で銀行等に通知をして口座情報の照会をすることになります。
照会請求の通知をする際に提出すべき書類は、各銀行等が指定する方法によらなければなりません。一般論として、
① 口座名義人(故人)が死亡したことの証明(除籍謄本又は死亡証明書)、
② 口座名義人と残高照会請求をしているご遺族の家族関係が分かる書類(戸籍謄本)、
③ 口座名義人の本人特定情報(開設時に銀行に届け出たパスポートコピーなど)
が必要となります。
戸籍等日本語の書類については英訳しなければなりません。
残高照会の結果香港でプロベートをすることになった場合、死亡証明書や戸籍とその翻訳は、後々香港の裁判所に提出する必要があります。
戸籍や死亡証明(日本で亡くなった方の場合は「死亡届記載事項証明書」となります。)の原本を何度も取り直すのは、それだけで時間と費用を浪費してしまいます。
ですから銀行等にはあくまで原本は提出せず、証明付きコピー(Certified Copy)の提出で済ませ、原本は手元に残しておくことをお勧めします。
銀行への残高照会の手続きだけを弁護士に依頼することも可能
銀行等の残高照会は、弁護士など専門家に頼むことができます。日本の専門家でもいいですが、海外の口座残高照会に慣れている日本の専門家を見つけられなければ、香港の弁護士に依頼するのがいいでしょう。
口座残高照会だけであれば、プロベート申立てに比べて安価な費用で代理してくれます。
近時、銀行等はマネロン対策のため、本人確認を厳しく求めるようになっています。
基本的には本人(又は相続人)自身が実際窓口に行ったり電話しないと、口座情報を開示しないのが現状です。
コロナ拡大の影響で、国境を越えた人の行き来が難しくなっています。
銀行等は、本人確認は厳しいですが、形式をしっかり整えれば比較的スムーズに対応します。
このため、弁護士の代理するレターであれば比較的簡単に対応してくれます。
自分自身で何とかしようとして壁にぶつかるようであれば、手間と時間の節約のため、香港の弁護士などに残高照会代理を頼むことをお勧めします。
以上、香港の銀行等の口座残高照会のが意外に難しいことについて説明しました。
プロベート全般に関するその他の記事はこちら↓
⑦相続手続に関する日本法と英米法の根本的な違い(1)(プロベートが必須)
⑧相続手続きに関する日本法と英米法の根本的な違い(2)(国ごとのプロベート)
⑨相続手続きに関する日本法と英米法の根本的な違い(3)(プロベートの順序)
香港特有のプロベートに関する記事はこちら↓
⑩香港では遺産分割協議書だけでは相続できない(プロベートが必要)
⑮香港のプロベートにかかるおおよその時間
㉗事例紹介:公正証書遺言のプロベート(香港の場合)
プロベートの回避方法・生前対策に関する記事はこちら↓
⑪香港の生命保険契約がある場合、プロベートは全く必要ない?
⑫(銀行・証券会社)ジョイントアカウントにはプロベートは不要
⑲海外財産の生前相続対策(1)(極力プロベートを回避すること)
⑳海外財産の生前相続対策(2)(資産管理会社について)
海外の信託(Trust)に関する記事はこちら↓
㉒海外の信託(Trust)について①~信託の歴史~
㉓海外の信託(Trust)について②~海外信託の利用~
㉔海外の信託(Trust)について③~信託の種類~
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