⑪香港の生命保険契約がある場合、プロベートは全く必要ない?
更新日:2020.6.24
日本人が駐在などで香港で生活している間、日本より利回りのいい生命保険や年金積立などの保険型商品を購入することが多いようです。そこで、こういった香港の生命保険のような金融商品について、香港でのプロベートが必要となるかどうかについて説明していきたいと思います。
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目次
日本人が海外の生命保険商品を購入するケースは多い
また日本に住んでいながら、利回りのいい生命保険などを購入するためわざわざ飛行機で香港に購入しに来る日本人もいらっしゃるようです。
以前はこのような日本人がかなり多かったのですが、最近では保険業法の規制(詳細はこちらを参照)などで香港に居住していない日本人がこれらの生命保険を購入することは難しくなっています。
日本人が香港で購入するこれらの保険や積立は、HSBCなど香港の銀行口座を通じて購入することができます。
また、香港にある保険代理店を通じて、香港やほかの海外(カナダ、オーストラリアなど)の生命保険会社などから購入することもできるようです。
生命保険というよりも一種の定期預金のような機能
これらの保険型商品に共通するのは、一定期間の掛金払込が終わると複利の定期預金のような形で高利回りで残存価値が増加していき、契約者が希望する時期に積みあがった元本と利息を払い戻ししてくれることです。
また、契約期間中に契約者(被保険者)が死亡すると、一定額の保険金が受取人に支払われますので、日本の『生命保険』のような機能を果たしております。
こういったものを購入する場合、万一の場合(不慮の死亡)のための『生命保険』機能よりも、利回りのいい金融商品、一種の投資商品としての機能に関心をもって購入する人が多いようです。
『受取人』を指定しないと生命保険もプロベートの対象となる
ここで、問題となるのが、日本人が香港でこれらの保険型商品を購入したものの、契約時に保険金の「受取人(Beneficiary)」を指定していないケースがしばしば見られることです。
これらは性質上『生命保険』なので、「受取人」が適切に指定してあれば、保険契約者(被保険者)が亡くなった場合、保険金は受取人に対して支払われます。
この場合、保険金は相続財産とは別扱いになります。保険金は相続財産ではありませんから、保険会社に払戻請求ために香港でのプロベートは必要ありません。
しかし保険金の「受取人」を指定していない場合、その保険契約や死亡保険金は、死亡した人の遺産(相続財産)に組み込まれてしまいます。
その結果、保険金の払い戻しを受けるために香港でのプロベートが必要になってしまいます。
日本人には『受取人』を指定し忘れているケースがよくある
日本人が購入している生命保険にはこのように「受取人」を指定していない生命保険などのケースは意外に多くあります。
勝手な想像ですが、そういった亡くなった契約者の方々は、『生命保険』よりも、高利回りの『投資商品』『貯蓄積立』としての機能に着目して購入したため、受取人を指定することを「つい」忘れてしまったのかもしれません。
或いは生命保険を販売した代理店や金融機関から十分説明を受けていなかったのかもしれません。
受取人は保険契約書や申込書などに書いてある
保険金の「受取人(Beneficiary)」は、保険契約書などの書類に記載してあります。
保険契約書は英文で書かれていて結構長いものですので、どのページに受取人のことが書かれているのか探すのは結構面倒です。一般的に受取人の指定をしたかどうかは、契約の申し込み時に必ず決めることなので、契約書や申込書の控えなどに必ず書いてあります。
書類をじっくり読んでもわからない場合は、保険契約書の書類がなくて受取人の指定が不明な場合は、面倒ですが保険会社に直接問い合わせる必要があります。
保険会社に問い合わせる場合、保険契約者(被保険者)が死亡したことを伝えるだけではなく、戸籍など故人と問い合わせをしているご遺族の関係が分かる証明書類を英語に翻訳して提出します。
保険の代理店を通じて問合せしてもよい
もしも、保険を購入したときに日本語ができる代理店を通して買ったのであれば、その代理店を通じて保険会社とやり取りするのが一番便利でスピーディです。
場合によっては戸籍の翻訳等を代理店の方が手伝ってくれることもあります。
保険金の受取人の指定があれば、香港のプロベートが必要ないので香港の弁護士を雇わずに保険金払戻手続きができます。
もっとも、もしも保険の代理店をご存じないとかご自分でやるのが面倒でしたら、こういった手続きになれた弁護士や行政書士などの専門家に頼むのがいいでしょう。
私ももちろん対応可能ですが、日本の専門家でも海外の保険の払戻手続きができる方がいますので、そういった方を探してみましょう。
以上のとおり、もしも亡くなった日本人が香港に生命保険を持っていた場合「受取人(Beneficiary)」の指定をまず確認しましょう。
①「受取人(Beneficiary)」を指定してあればプロベートは不要、
② 指定が無ければプロベートが必要になる(つまり香港の弁護士に依頼する必要がある)、
ということを覚えておいてください。
プロベート全般に関するその他の記事はこちら↓
⑦相続手続に関する日本法と英米法の根本的な違い(1)(プロベートが必須)
⑧相続手続きに関する日本法と英米法の根本的な違い(2)(国ごとのプロベート)
⑨相続手続きに関する日本法と英米法の根本的な違い(3)(プロベートの順序)
香港特有のプロベートに関する記事はこちら↓
⑩香港では遺産分割協議書だけでは相続できない(プロベートが必要)
⑮香港のプロベートにかかるおおよその時間
⑯香港の銀行・証券会社への口座残高の照会は結構難しい
㉗事例紹介:公正証書遺言のプロベート(香港の場合)
プロベートの回避方法・生前対策に関する記事はこちら↓
⑫(銀行・証券会社)ジョイントアカウントにはプロベートは不要
⑲海外財産の生前相続対策(1)(極力プロベートを回避すること)
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