日本人弁護士(日本・香港・NY州)による国際相続・海外企業法務

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香港財産相続・海外企業法務
香港(永住権保有)在住・日本人弁護士による国際企業法務・相続・資産管理

香港で、日本人・日本企業が関係する国際企業法務・国際取引契約・国際相続・海外資産管理の実績(全国対応)を多数有する弁護士の絹川恭久です。

日本、NY州及び香港3つの法曹資格を持ち、日本(15年以上)と香港(5年以上)でそれぞれ実務経験を持っております。
国際相続の極意

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㉚裁量信託(Discretionary Trust)と意向書(Letter of Wishes)の活用法

更新日:2022.11.19

前回のテーマ㉙では、「裁量信託(Discretionary Trust)」を作る際に「意向書(Letter of Wishes)」には具体的にどういった内容を書くのかについて説明しました。 今回は、裁量信託や意向書の具体的な活用場面について、事例を元に説明していきたいと思います。

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 ㉒海外の信託(Trust)について①~信託の歴史~
 ㉓海外の信託(Trust)について②~海外信託の利用~
 ㉔海外の信託(Trust)について③~信託の種類~ 
 ㉘裁量信託(Discretionary Trust)と意向書(Letter of Wishes)
 ㉙裁量信託の意向書(Letter of Wishes) に書き込む内容について

ケース事例:親子とも海外居住

現在父親(日本人・40代後半)が海外に居住しており、海外で成功した事業による多額の収入と相当の海外資産を形成しています。現在奥様と子供1人とともに海外に住んでおりますが、子供はまだ未成年で海外のインターナショナルスクールに通っています。ご家族全員海外居住者となって(すなわち、日本の「非居住者」となって)から既に10年以上になります。 このような状況で、父親は、自分にもしものことがあったことを考え、何らかの方法で子供に自分の海外資産の相当部分を承継させようと考えています。

贈与税(日本・外国)の整理

まず、日本人の父親から子供への資産の無償譲渡(贈与)については、日本及び居住する外国の贈与税(相続税)が問題となります。日本の相続税法によると、

・日本人同士の資産の贈与であること、
・贈与者(贈与する人)・受贈者(受け取る人)ともに10年以上日本の非居住者であること、
・ 海外にある財産(「国外財産」)を贈与すること

上記場合については日本国の贈与税が課せられないことになります。
逆に言うと、いずれか一方が過去10年以内に日本の居住者であった場合、国外財産の贈与について贈与税がかかってしまいます。

なお、日本の贈与税とは別に、居住している外国現地国の贈与税(相続税)に注意しなければなりません。
例えば、香港シンガポールニュージーランドなど、いくつかの英語圏の国では贈与税(相続税)が既に廃止されているので、そのような地域に居住している場合は、日本の贈与税の事だけを考えればいいことになります。

例えば父親も子供もともに10年以上外国(香港やシンガポールなど)に居住している状況で、父親が持っている国外財産を子供に贈与したとしても、外国(香港やシンガポールなど)の贈与税も、日本の贈与税もいずれも発生しないことになります。

このような理由で、親子とも10年以上海外に居住している場合に、父親から子供への資産の贈与・無償による財産移転を考えることになります。

長谷寺(奈良県)

生前贈与による子供への資産の移転の問題点

まず、端的に生前贈与(Inter vivos gift)の形で子供に資産を贈与する場合を考えます。これについては、以下のように、未成年者代理権の問題が生じます。

どの国でも未成年者は単独で法律行為を行う能力を持たず、親が法定代理人として子供の代わりに贈与契約を締結しなければなりません。
しかし、親が子供との間で締結する贈与契約について子供の代理として署名するとなると、
 親が「①親(自分自身)」と「②子供の代理と」しての2つの役割
で契約することになって利益相反になります。
このような利益相反を回避するため、そのような利益相反を回避するため、国によっては親が子供の代理として契約するためには、裁判所に申し立てて父親(母親)とは別の法定代理人を選任しなければならないなどの制約があります。

また、例えば銀行預金(資産)を子供に贈与しようとすると、子供名義の預金口座を作らなければなりません。
しかし、子供名義の口座を作れない銀行もありますし、親が管理する子供名義の銀行口座は「名義預金」として実質的には親の財産ではないか、という要らぬ勘繰りを税務当局などから受ける可能性もあります。

このように、未成年の子供に生前贈与をしようとすると色々と支障があるので、できれば避けたいと考えることになります。

生前贈与の問題点回避→裁量信託の活用

そこで、未成年の子供と贈与契約を締結せずに海外資産を子供に与える代替案として、海外信託(Trust)を考えることになります。

信託(Trust)は信託設定者(Settlor)と受託者(Trustee)の二者間契約(Trust Deed)の締結で設定できます。

受益者(Beneficiary)として子供を含めたとしても、(未成年の)子供は契約当事者ではないので、法定代理人の選任という、生前贈与に付きまとう法定代理人の問題は生じません

また、裁量信託(Discretionary Trust)を設定するとともに、意向書(Letter of Wishes)を作成すれば、資産を受託者(Trustee)に移転した後も、受益者(Beneficiary)や受益権の内容を柔軟かつ機動的に変更することができます。

たとえば、信託を設定する際に裁量信託として、意向書の中で

① 当初の子供が未成年の間は、父親だけが受益者となり、
② 子供が一定の年齢に達したら、父親に加えて子供も受益者として追加し、
③ さらに子供が一定年齢に達したら、父親を受益者から除外して、子供のみが受益者となるように変更する、

といったように設計するのです。
また、信託設定後に子供の進学先が変わったり、人生設計が大きく変わった場合でも、意向書を都度書き換えるなどして、受益者指定をその時の家族の状況に応じて柔軟に変更するのです。

生前贈与との比較で言うと、上記のように最初に裁量信託を設定し、子供が一定年齢に達した後に父親が受益者から退く(除外する)ことにより、実質的に信託財産が子供に確定的(不可逆的)に引き継がれた状態になります。

この「子供への確定的な引継ぎ」タイミングを、子供が成人した後にしたり、子供が進学や就職のために居住地を海外から日本に移す前にするなど、柔軟に対応することができます。

長谷寺(奈良県)

生前贈与に比べた(裁量)信託のメリット

このように裁量信託(Discretionary Trust)をうまく利用することで、生前贈与のような(贈与契約を締結しなければならない)法定代理人の問題をクリアでき、かつ、より一層機動的、柔軟に生前贈与と同様の効果を生じさせることも可能となります。

また信託(Trust)では、父親が万一意思無能力となった場合についても、予め信託契約書や意向書で指定しておくことができます。例えば父親が意思無能力となった場合でも、父親の生活費、医療費、税金等、子供の教育費などのために、信託財産から一定の資金を支出できるようにしておくのです。

以上、今回のコラムをまとめると

子供が未成年のうちは、基本的に子供の居住地や学校は親が決めることは多いでしょう。
しかし、高校生・大学生となったり、社会人となる過程でいつかは子供が親とは別に自分の人生を決める時が来ます。
親は子供の人生設計すべてをコントロールすることはできないのです。

ですから、子どもの人生設計を尊重してあげながら、なおかつ、親として安心して子供に資産を承継させることを考える必要があるのです。

そのような場合に、特に海外に居住している場合には(裁量)信託というものが一つの解決策になります。

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長谷寺(奈良県)

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